地面に伏せ、肩を震わせて涙を流している女が、姉さんと気付いて、僕は慌てた。
それまで見惚れていたことを取り消そうとしたけれど、どうにもならない。
泣いている女が姉だとわかっても、声は掛けられなかった。
涙が地面に溜まっていくのを、僕は息を飲んで見ていた。
さっき慌てたことも忘れて、やっぱり見惚れている。
涙は地面に吸い込まずに女の身体にまとわりつき、少しづつ沈めていた。
ついに女の身体は涙に沈んで見えなくなった。
「姉さん」
と言ってみたが、掠れた声しか出てこなかった。
そしてまた、大きな涙の中でうずくまる姉に、見惚れる。
《二胡》