懸恋-keren-
超短編
2005年11月19日土曜日
雨の声
雨音が聞こえない。
こんなにも土砂降りなのに町はしん、としていた。
「声出して泣きなよ」って低い声がして、振り向いたら
乳母車に乗った赤ん坊が低い雲を指さしていた。
赤ん坊はさっきよりもっと低い声でもう一度言った。
「声出して泣いていいんだ」
途端、雨音で何も聞こえない。
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