懸恋-keren-
超短編
2003年4月3日木曜日
午前三時
コンビニまで歩いて四分。
それは徹夜仕事の気分転換兼、夜食の買い出し。
毎晩決まって三時頃である。
すっかり寝静まった住宅街から、表通りに出ると眠らない蛍光灯のカタマリが出現する。
安堵と拒絶が同時に沸き起こる。
ガラスドアを押す。
「いらっしゃいませ」
おや、ずいぶん老けた声だ。
数分後、酒と弁当を抱えてレジの前に立つ。
老店員は小さな声で言った。
「……をお忘れではありませんか?」
その瞬間、僕は幻を見た。涙が独りでに流れた。
あれからその店員は見ていない。
今夜も僕はコンビニへ行く。
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