懸恋-keren-
超短編
2003年4月9日水曜日
朝六時
まだ暗い冬の朝、六時。
いつものように駅に向かっていた私は、妙にウキウキとしていた。
楽しみな予定などないのだが。
駅までの景色は相変わらずだ。
それに定年間近の身体には、朝の寒さがマフラーを巻いても堪えるというのに。
私は自分を訝しく思った。
「どうしたオレ?気持ち悪いくらい心がおどってるぞ?」
胸の高鳴りは、ホームに電車が入ってきた時に最高潮となった。
プーシュー
早めの通勤電車の乗客たちが私を見て一斉に叫んだ。
「久しぶりだな!元気だったか?」
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