2002年8月30日金曜日

千円

妹と俺は墓参りの帰りだった。
どこかで休憩しようかと言い合っていたとき、
妹が喫茶店を見つけた。
「ここでいいんじゃない?」
「そうだな・・・。ちょ、待った!コーヒー千円だって。普通、ありえないだろ?ほかを探そうぜ」
コーヒーに千円も出せない。俺たちは母に頼まれ、少しの駄賃で掃除をして線香をあげただけなんだから。
「高いけど、たまにはいいよ。入ろう!」
彼女は言いながらドアを開けた。
ドアの向こうに立っていた人を見て俺も妹も青ざめた。

10年たった今でも、千円は決して高くなかった、と思う。