2024年10月29日火曜日

#秋の星々140字小説コンテスト 「長」投稿作

「具合が悪いのです」と渡されたのは月長石だった。石に具合も調子もあるものか。私は獣医だ。「黒猫の温もりと月光浴が必要です」疑いつつ入院中の黒猫に月長石を差し出すと「委細承知」の顔で石を抱えて丸くなった。満月のよく見える部屋で一晩過ごさせると、黒猫も石も見違えるほど艶やかになった。