バケットをカリカリに焼いて、バターを塗り、スープと共に食べるのが、私の楽しみである。スープは三種類。今日はレンズ豆のスープ、にんじんポタージュ、ミネストローネ。もちろん自分で作る。一人で食べるには手間が掛かるし、ちょっと贅沢だ。
このお楽しみのために、一人暮らしを初めて早々に同じ鍋を色違いで三つ買った。厚手の琺瑯鍋だ。これで一度にスープを三種類作りたくても、鍋が足りずに困ることはない。高い買い物だったが、毎週のように使っているし、色違いの鍋が台所に並んでいる様子を眺めているとそれだけでウキウキする。
レンズ豆のスープは緑色の鍋、にんじんのポタージュはオレンジ色の鍋、ミネストローネは白い鍋に作った。たっぷり作ったから、三日は持つだろう。私は明日の朝の朝食に再びスープを食べることを楽しみに眠った。
翌朝、台所にはチグハグな鍋が並んでいた。緑色の鍋に白い蓋、オレンジの鍋に緑の蓋、白い鍋にオレンジの蓋。心なしかスープも減っているようだ。
「泥棒?!」と思ったけれど、どうもそうではないような気がする。きっと鍋同士で味見大会をしていたのだ。だって蓋にはこれまたチグハグにスープの跡が残っているから。