玄米のスープは本当に丁寧に作らないといけないのだ。私は深呼吸して鍋に向き直った。祖母は万事、丁寧な人ではあったが、玄米スープを作るときは特別だった。背筋をすっと伸ばし、木べらをゆっくりゆっくり動かす仕草からも真剣さが伝わってきた。
祖母は私や両親が少し調子を崩しかけている時、それも本人がそうと気が付かないくらいのうちに、何も言わずに作って出してくれるのだった。
祖母が亡き後、ずいぶん長いこと玄米のスープのことを忘れていたが、この頃なんとなく体調がすぐれない日が続いて、ふと思い出して作ってみる気になったのだ。
「ゆっくり、ゆっくり。優しく優しく」いつの間にか、祖母と同じ口調でつぶやきながら、ゆっくりと木べらを動かす。
玄米のスープは、昔と同じ味がした。うまくできたようだ。祖母が頭を撫でてくれた気がした。