懸恋-keren-
超短編
2009年11月25日水曜日
夢 第十二夜
誰かが私の顔を捻っている。頬骨に力が掛かり、下顎が突き上げられる。額が押されて、鼻が潰れる。
顔を捻られているから声が出せない。やめてくれということはできない。
「これは治療なのです。あなたの苦痛が和らぎます」
人の顔を捻っている手の持ち主とは思えぬほど穏やかな声が、頭の上から降り注ぐ。
「治療によって、容姿も整うでしょう」
そう言われて、もうずっと長いこと、鏡を見ていないことに気がつく。
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