蜘蛛の糸が縦横に張り巡らされた白い部屋に私はいる。露で濡れた糸は偏光パールのような輝きをするからとても綺麗。私は糸を切らないように、露を零さないように、じっとしている。
「あ」
私は初めて声を出した。何を思ったのか、何を感じたのか、知る暇もなく声は口から飛び出していた。
声が衝突して、一本の糸が痺れるように振るえた。振動は糸から糸に伝染して、部屋中の糸がびりりと振るえはじめた。
振動する糸から露は全部零れ部屋を満たす。透明過ぎるその水に私は溺れた。溶けていくのが解る。
目覚めると、私はこの部屋を張り巡る糸になるのだ、きっと。