懸恋-keren-
超短編
2009年6月15日月曜日
芳しい天気
昔はしとしと降るものだった、梅雨の雨は。何だってこんなタチの悪いどしゃ降りになるんだろう。
雨が降る直前の埃っぽくて湿った匂いは、決して嫌いではなかった。九歳の時、それを詩に書いたくらいだ。
以来、僕は天気を読む時は鼻をひくひくさせるようになった。あの詩を書いたときの気分をいつでも思い出したいから。
太陽の匂いも大好きだけれど、それは子供の頃と変わらない。
あの、梅雨の雨の前の匂いは、もう四年も嗅いでいない。
(202字)
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