懸恋-keren-
超短編
2009年6月30日火曜日
生の煮魚
沸騰滝。地下のマグマが地下水を熱し、噴き上げる。山肌に到達した熱い地下水は湯気を上げながら勢いよく崖を落下する。
滝壺に棲む魚は、湯の中を濁った眼で泳いでいる。
ここの魚は美味いらしいが、もはや初めから煮魚で、煮ることも焼くことも、捌く必要すらなく、もくもくとした湯気が立ち込める中、釣ったばかりの魚を箸でつっつき、つっつき食するのだ。
(166字)
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