2008年2月13日水曜日

消し炭で作られた塔

人の背丈を越える高さの真っ黒い塔が、広場に出来た。
消し炭で作られたこの塔を建てたのは、毛糸の帽子をかぶった老人である。
老人の手は炭よりも黒くなり、夜の闇に紛れている。
だが、ヌバタマという名を持つ黒猫だけは老人の手を見失わない。
ヌバタマは舐める。
白く痩せた老人の手が現れる。
老人は消し炭の塔に両手をかざす。
ヌバタマは月を見上げる。
消し炭の塔に、ぽっと火がつく。
月面に塔の影が映る。