懸恋-keren-
超短編
2008年2月16日土曜日
踏まれた猫の物語
巨大な蟻に踏まれた黒猫は、声を上げなかった。黙って蹲り、蟻が去るのを待った。
ヌバタマにはわかっていた。いくら巨大だと言っても、蟻に踏まれたことで死ぬことはない。実際、蟻は巨大ではあるが、重たくはなかった。
それに、こんな新月の夜に蟻が黒猫を踏みつけていたって、誰も気付きはしないのだ。
ただ、少女には忠告しなければならない。月からもらったルーペで遊ぶのはほどほどにしろ、と。
次の投稿
前の投稿
ホーム