2007年6月29日金曜日

六月二十八日 痛みのない殺戮

蛍光灯の光に誘われた虫が、窓をびっしりと覆っていた。
部屋の中から、神経質そうな面持ちの少年がガラスに人差し指を押しつけている。
ぷつっぷつっと、虫が一匹また一匹と墜ちていく。
ガラス越しなのに、なぜ。

窓には無数の小さな虫、それでも少年は人差し指を一匹づつ狙って、押しつけていく。一定のテンポで。
少年の指に虫の感触はなく、虫もまた、押し潰されることなく息絶える。

私は立ち上がり、蛍光灯のスイッチを切った。
虫たちは別の灯りを求めて飛ぶはずだ。
だが、虫を助けたのではない。
この少年に虫殺しの資格はない。