懸恋-keren-
超短編
2007年6月11日月曜日
六月十一日 逃亡する毛
切られた髪の毛は、さっきまで自分の一部だったのに、もうゴミにしか見えない。しかもひどく不気味な。
私は一束の切られた髪の毛が箒から逃れて出て行くのを見た。
私の身体だったのに、止めることができない。
逃げた髪の毛が何を考えているのかもわからない。
かつて自分の一部だったものが、どこかで違う時間を過ごそうとしている。
それは、奇妙に愉快なこと。
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