懸恋-keren-
超短編
2007年4月8日日曜日
九月二十六日 置き薬
薬屋は黒いスーツにジェラルミンケースを持ってやってきた。
薬箱の前でジェラルミンケースを開けると、薬が飛びかいだした。大道芸のようだ。風邪薬は軽やかに、胃薬は高く、湿布はひらひらと、包帯は回転しながら、飛んだ。
すっかり薬の整った薬箱は、何事もなかったように蓋が閉じられ、ジェラルミンケースも静かになった。
金を支払うと、薬屋は深々とお辞儀をして、帰っていった。
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