2006年5月10日水曜日

涙の予言

妊娠中、つわりが酷くて妻はよく泣いていた。
涙を拭ったハンカチは、何故かほんのりと緑色に濡れていて
俺は訝しんだが、妻は気にしないで、と言っていた。
夏の朝に生まれきた娘の胸には、小さな雫型の石がついていた。
淡い緑色。褐色の肌にはあまり目立たないが、時折強く輝いた。
妻が緑色の涙を流したのは、赤ん坊の石のせいだったのか。
俺はその石を外そうと試みたが、妻に止められた。
「とてもよく似合っているじゃない?」
ペリドットという石だと、産婆が言った。
宇宙の子だ、と老人が言った。
うるさい、俺の娘だ。