懸恋-keren-
超短編
2005年7月8日金曜日
フクイサウルスは、迷子
フクイサウルスは、歩く。
スクランブル交差点、ビルの屋上、地下道。
えっちら、おっちら、歩く。
きみなら彼に声を掛けるかもしれない。
「やあ、フクイサウルス。どこ行くの?」
フクイサウルスは、笑って答える。
「迷子なの」
えっちら、おっちら、歩くフクイサウルスは、なぜだか笑ったままなのだ。
とても楽しそうなのだ。
あまり迷子には見えないけれど、デパートの中、大通り、野外劇場。
フクイサウルスは、たぶん母を探して歩いている。
《Fukuisaurus 白亜紀前期 全長4.7メートル》
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