警笛が鳴る。
月と少女は夜の港にいた。アフリカから到着した貨物船から降りてきた船長を目ざとく見つけ、少女は駆け寄る。
「船長!」
「キナリ、大きくなったなぁ」
「アップルタイザーは?」
「あっちだ。もうすぐ降ろし終わるよ」
少女は、すぐに駆け出した。持ってきたリュックをアップルタイザーのみどり色の瓶で一杯にするであろう。
月は、船長にボロボロの紙幣を渡す。船長は月明かりに紙幣を透かしニヤリとした。
「本物だね」
「皮肉な奴だ」
船長からワンカートンの煙草を受け取る。
「キナリは何を買ったのだ?」
「アップルタイザー。ナンナルにはあげない。ナンナルは何買ったの?」
「煙草」
月は大きく煙を吐く。
「あ、月が雲に隠れた」