ツツジの花をもぎ取って蜜を吸ってみた。小学生の頃は学校帰りによくやったものだ。
二つ目の花をもいだとき、蝶が襲ってきた。完全に不意打ち。
{それを吸うな}
「これはオレんのだ」
{人間はこんなの吸わなくても死にやしないだろ。こっちは命かかってるんだ。人間め!花を返せ}
蝶は涙を流しながらオレを殴る。
「まだこんなに咲いてるじゃないか……」
と言うのはやめた。必死な蝶を目の前に、急速に気分が沈んでいた。景気が悪いのも、戦争が終わらないのも、地球が温暖化しているのも、みんなオレが悪いんだよなあ。
オレはひたすら蝶に殴られ続けた。躑躅色が目に染みる。