ひょいと投げた帽子はブーメランのように少年の手に戻ってきた。
「何が入っていると思う?」
私は答える。
「なにも」
だって少年は帽子のツバをつまんでいるだけだもの。何かが入っていても落ちてしまうはず。
「さーてお立会い。みなさん驚いちゃいけませんよ」
みなさん、って私しかいないのに。驚くな、って私が驚かなければ少年は不機嫌になるでしょう。
少年はイタズラをしたときのような顔で私を見ながら帽子をひっくり返す。
「キャ!」
「これ、解剖して自由研究にするんだ。んじゃ」
少年は蛙を頭に載せ、帽子をひらひら振りながら去った。