2003年1月16日木曜日

辻強盗

その十字路を曲がるとある物をなくす、という事件が頻繁に起こった。
人々はそれを辻強盗と呼んだ。
強盗と言っても、なくなるのは金目の物ではない。
だが、それ以上になくしては困るものだった。
その十字路を曲がった物は自分の名前を忘れるのだ。
呼び掛けられてもわからない。家族が教え込んでも無駄だった。
それは三日という短い間だったが、日常生活もままならなかった。
月は問い詰めた。「なぜこんなことをするんだ?」
流星は答える。
「冥土の土産にもってこいなのさ」
月は何も言えない。
流星の言葉はいつも謎だらけだ。