超短編
子供の頃、いつもポケットに手を入れて歩いていた。「転んだ時危ない」とよく叱られたが、親はそんなことは言わなかった。生まれる前から握りしめていたものを入れているのを知っていたから。母は時々「ちょっと見せて」と言った。嬉しそうな涙声で。