超短編
白い花が一面に散らばっている。雨に濡れた辛夷の花。
花を落としてしまった辛夷の樹は、茫然自失で雨に打たれている。
「気持ちがわかるなあ」
樹を見上げながらウサギは言う。
「ウサギの花はどこに咲くのだ?」
からかってみたものの、白い花びらの中で佇むウサギと辛夷は確かによく似た気配で、しばし見惚れる。