超短編
折りたたみ傘が旅に出たいと騒ぐ。風が強いせいだろうか。新しい傘に嫉妬しているのかもしれない。
私は必死に傘を持つ。でも、心のどこかで、傘のしたいようにすればよいじゃないか、と思っている。
そんな瞬間にいっそう強い風が吹き、傘はおちょこになってしまう。
それでも私にはこの傘が必要なのだ。電車に乗る度、屋内に入る度、私は折り畳み傘を丁寧に畳み、カバーを着ける。
畳まれた傘は少し泣く。