2012年6月1日金曜日

箱庭

子供が箱庭を作っている。


「これは何?」


「これは、佐藤さんちの梅の木」


「これは何?」


「これは、鈴木さんちの浜辺」


「これは何?」


「これは、松本さんの家」


それらは赤や青や黄色の、形容しがたい物体だったが、子供がそう言うのだから、そうなのだろう。


最後に、大きなピーマンを作って真ん中に置いた。それは、誰が見てもピーマンだった。今日の夕御飯は、子供の嫌いなピーマンの肉詰めなのを、私はまだ子供に伝えてはいない。


出来上がった箱庭を、子供はダンボール箱に仕舞った。


「これは、僕の胃袋」


夜中、そっと覗いてみると、箱庭は、滅茶苦茶になっていた。


翌日、子供は腹を壊し、恨めしそうに「お母さん、覗いたでしょう」と言った。