子供が箱庭を作っている。
「これは何?」
「これは、佐藤さんちの梅の木」
「これは何?」
「これは、鈴木さんちの浜辺」
「これは何?」
「これは、松本さんの家」
それらは赤や青や黄色の、形容しがたい物体だったが、子供がそう言うのだから、そうなのだろう。
最後に、大きなピーマンを作って真ん中に置いた。それは、誰が見てもピーマンだった。今日の夕御飯は、子供の嫌いなピーマンの肉詰めなのを、私はまだ子供に伝えてはいない。
出来上がった箱庭を、子供はダンボール箱に仕舞った。
「これは、僕の胃袋」
夜中、そっと覗いてみると、箱庭は、滅茶苦茶になっていた。
翌日、子供は腹を壊し、恨めしそうに「お母さん、覗いたでしょう」と言った。