懸恋-keren-
超短編
2012年6月11日月曜日
踊る
目の前にピエロが現れた。ピエロは僕を一瞥して、踊り始める。
激しいステップを踏むのに、足音はしない。涙を流して天を仰ぐのに、嗚咽は聞こえない。
僕は、ピエロが無音で踊ることを知った。
ピエロはターンして、鏡になった。
鏡の中のピエロがじっと僕を見ている。
僕は踊り始める。音も立てずに、踊り続ける。
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