懸恋-keren-
超短編
2012年6月19日火曜日
台風の声が聞こえる
台風がやってくると、私は小さな土鈴を窓際にぶら下げる。
鈴といっても、中は空で普段は振っても音はしない。
台風の雨風のときだけ、鈴は歌う。
チリンチリンというときもあるし、ヒュルンヒュルンというときもあるし、ルルルルルというときもある。
これは鈴ではなくて、笛なのかもしれないと思って、一生懸命吹いてみたけれど、やっぱり台風のときにしか音は出ない。
「どうして?」と祖父に聞いたけれど、祖父は「作った人が嵐のような人だったから」と遠い目をして言うだけだ。
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