「冷蔵庫を貸してくれませんか」と鳥に訊かれた。訳を聞くと「卵を冷やしたい」という。
なんでも、この鳥には時々冷やさないと孵らない卵が生まれるそうだ。
冷蔵庫を貸すくらいどうってことはないから、快く貸した。
けれど、困ったことにその鳥の卵が鶏卵そっくりなので、どれが食べていい卵で、どれが冷やし中の卵かわからなくなってしまったのだ。
「卵が孵るまで、六週間ほどです。それまで決して卵を動かさないでください。どうかよろしくお願いします」
と言われたから、もう、どの卵も触れることができない。
大好きなゆでたまごが食べられない由々しき事態は当分続く。