懸恋-keren-
超短編
2012年3月17日土曜日
死よりも強し
連れ合いを何者かに殺された鴉は、自らの羽を一枚、また一枚と嘴で引き抜き、その亡骸の周囲を守るように飾っていった。
死んだ鴉はいつまでも黒く輝き、その周りの羽は、日に日に色が褪せていった。
丸裸になった鴉は寒さと飢えに震え、それでもなお亡骸から離れようとしなかった。
羽のない鴉が死んでいるのを見つけた老人は、傍らに別の鴉の死骸と大量の白っぽい羽が落ちているのを見て、ひどく驚いたそうだ。
二羽の鴉は、老人が孫と一緒に手厚く葬ったという。
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