懸恋-keren-
超短編
2010年9月17日金曜日
SOMETHING BLACK
黒いものが欲しい、とお月さまが言うので、黒いペンを渡したら「それは違う」と言う。
黒いサングラスを渡しても、黒い傘を渡しても、黒い靴を渡しても、「それもちょっと違う。悪くはないが」
結局、黒いブランケットを渡したら「これだ、これだ」と、喜んで頭から被り、町を歩き始めた。ついでに黒い靴を履いて、黒い傘をさして。
それは夜の町でも随分おかしな格好だったので、町行く人々は相当不審そうな顔でお月さまを見た。
家に帰り、カレンダーを見て、気がついた。今夜は新月だったのだ。
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