2010年9月15日水曜日

明日のデート

大切な指輪を失ってしまった。
飼い犬に訊いてみると「蟻が運んで行った」。
蟻の巣に「指輪を返して」と囁いた。
蟻は「甘い匂いがしたのに、食べられないから、捨てた。多分、蜘蛛が持っていったよ」。
町中の蜘蛛の巣を捜した。ようやく見つけたのはマツダさんの家の門扉だった。蜘蛛の巣に、指輪が輝いていた。
「蜘蛛、私の指輪を返して」
「代わりにこれよりも、もっと綺麗でもっとピカピカしたものをくれたら、返してやる」
私は恋人に相談した。「蜘蛛が指輪を返してくれないの」
「それじゃあ、もう一度蜘蛛に返してってお願いしにいこう」
というわけで、明日、私は恋人と手をつないでマツダさんちの門扉に行く。
ポケットにはビー玉と王冠とパチンコ玉。蜘蛛はどれを気に入るのかしら。
とても楽しみ。


『超短編の世界3』の作品募集には、すでに過去作品から選んで投稿したのだけど、新しいのも書いてみようと思って書いたのがコレ。
「フシギな恋」……フシギってなんだ? 恋ってなんだ? フシギな恋って? うわぁぁぁ。ってなった。
コレは「恋の周辺で起きたフシギな出来事」であって、「フシギな恋」ではないなぁ。