懸恋-keren-
超短編
2009年9月6日日曜日
夢 第八夜
雨が降りだしそうな鈍色の空の下、私は傘を持って信号が青になるのを待っていた。
不意に、傘を持った手を引っ張られる。背の高い、表情の乏しい男が私の手首を掴んでいる。
信号が青になる。私は走り出す。向こうに行けば、逢いたい人に逢えるはずなのだ。
だが、走っても走っても、知った顔に出合わない。
歩く人全てが、あの表情のない背の高い男で、走り疲れた私は、とうとう男に捕えられてしまう。
(185字)
次の投稿
前の投稿
ホーム