尻尾を切られた黒猫は、夢を見た。
コルネット吹きが独りでコルネットを吹いている。黒猫は聴いたことのないメロディーだ。コルネット吹きは誰にそれを聴かせるふうでもなく、夜空に向け、遠くへ遠くへ、音色を飛ばそうとしていた。
音色はやがて色になり、空一面に散らばり始めた。七色の空に瞬く星星。
こんなに空が明るくなってもコルネット吹きは演奏を止めない。黒猫は眩しくて目を閉じた――
目を覚ますと黒猫はコルネット吹きに逢いに行った。
〔何故コルネットを吹くのだ?〕
「ヌバタマは難しい質問をするな。夜空を黒くするためさ。七色の夜空なんて、可笑しいだろう? この中には、夜空から吸い取った色が入ってるんだ」
黒猫はコルネットのラッパの中に頭を入れてみたが、夜空のように黒いだけだった。
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