レントゲン技師は申し訳なさそうにこう言った。
「ミスター、あなたのレントゲンには頭部が写らないのです。つまり、その、頭蓋骨が……ない、ということです」
ああ、私はこの善良そうな若きレントゲン技師を困らせてしまったようだ。
それにしても、私はどこで頭蓋骨を落としてしまったのだろう。
ホスピタルを出、道端にごろごろと転がっている夥しい数の頭蓋骨を前に途方にくれた。この中から私の頭蓋骨を捜すとなると実に骨だぞ、と呟きながら、明らかに自分よりも小さな頭蓋骨を一つ拾い上げる。
「これにしてしまおうか」
すると小さな頭蓋骨は、まだ年端もいかない声で叫んだ。
「拐かしめ!」
(276字)
発掘作。