首都圏外郭放水路に、巨大神殿が出来た。河童の神殿である。首都圏の河川に棲む河童たちが共同で建設したこの神殿には、河童の神が祀られ、巨大なプールを備え、河童たちのサロンとなった。
河童たちは神殿が出来た後も各河川に暮らしていたが、次第に神殿の周囲に移り住む者が現れた。広場ができ、住処が作られた。胡瓜の備蓄倉庫は、神殿に負けない規模だ。
拡大した河童の地下都市は首都圏外郭放水路全体に及び、もはや地上の河川に棲む河童はほとんどいない。地下都市に移り住むのを嫌がる年寄りが僅かに残るだけとなった。
地下都市で生まれ育った河童は、色白で光に弱い。時折、胡瓜を調達すべく地上に現れるが、そのついでに人間と相撲を取りたがる。狙うのは、尻子玉ではなく、サングラスだ。
「未来妖怪」没作