懸恋-keren-
超短編
2007年8月16日木曜日
氷輪
プルシアンブルーの空に、氷の球体が浮かんでいる。
砂漠の灼熱をせせら笑うように、キリリと凍った月。
触れそうにくっきりと見えるのに、氷の珠は掴めない。いくら腕を伸ばしても、掌には熱風がしがみつくだけ。
「一滴くらい溶けてくれてもいいものを」
と、相棒の駱駝に語りかける。
「泣かせてみればいいだろう?甘く囁いて」
駱駝は首を捻って月を見やってから、ニヤリと黄色い歯を剥き出した。
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