懸恋-keren-
超短編
2006年11月4日土曜日
あらくれもんのあさ
レモンはすっぱい。それだけのことだ。
と俺は独りごちた。冷蔵庫にはレモンが一つ。ほかには何もない。
昨日、冷蔵庫は空だった。買い物には行っていない。
あの女か……。
俺はまた独り言をいう。名前も知らない女が置いて行ったレモンを口にするのは不気味だったが、俺は腹が減っていた。曲がりなりにも食品であるレモン、それは捨てることができないほどに腹が減っていた。
レモンは、甘すぎて涙が出た。
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