懸恋-keren-
超短編
2006年11月17日金曜日
残り香
彼がまぼろしだとしたら、どうする?
大葉の香りは、私をいつも不安にさせる。
大好きだから、好きになればなるほど、彼はまぼろしの存在で本当はどこにもいないんじゃないか、という妄想に取り付かれる。
三日前のキスの感触も、昨日の夜のメールもちゃんと残っているのに、それもすべてまぼろしに思えてくる。
刻んだ大葉を中華鍋に入れると、鍋の中は空っぽになった。
大葉の香りだけが、台所に充ちている。
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