懸恋-keren-
超短編
2004年12月23日木曜日
忍び寄る影
長く伸びた男の影が歩いていた。
「どこに行く?」
私の影が話し掛ける。
「おまえらには関係ない」
私は大きく息を吐く。
「まもなく日が暮れる、そうやってひとりでいると、朝になるまでに死んでしまう」
「【本体】のもとに戻ったほうがいい」
「気持ちはわかる。しかし、一人になってもいいことはない」
私の影は説得を始めたようだ。
「…そうやって心配してくれたのはあんた達がはじめてだ」
影は私に近付き、すっと足に触れた。
私の影は、16体になった。
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