「やった!」
俺は路肩に停めて、車から降りた。スッと猫が飛び出して来たのだ。
恐る恐る横たわる猫に近づく…あれ?
道路に倒れているのは、猫の影だった。
「おい、猫。おまえは影だけの猫じゃないか。車に轢かれたからってどうってことないだろ」
俺は猫の影をつついた。指にはアスファルトの感触だけ。
「おい、起きろよ、猫の影。起きないとなぁ…」
俺は辺りを見回し、ジーンズのジッパーを下ろした。「…こうしてやる!」
たちまち猫の影は動きだし、身震いしてしぶきを盛大に撒き散らし去った。
俺は、出始めたものを途中で引っ込めるわけにもいかず、道路の真ん中でむなしく立ち小便を続けた。