下ばかり見て歩いていると影に蹴り上げられて、後頭部強打でナンマイダ、ですよ。
2004年12月29日水曜日
犯人は誰?
目が覚めると、影が白い血をあちこち滲ませていた。ところどころ赤い血も見える。
「一体何があったんだ、ぼくの寝ている間に」
絆創膏を貼ってやりながら問い質す。影に無茶されれば、結局はぼくが困るのだ。
「通り魔を追い掛けた?それでちゃんと捕まえたのか?え?殺しちゃった?!死体は家の前?おいおい魂消(タマゲ)たねえ、こりゃ」
やっばり警察に行かなくちゃいけないかなあ。もしかしてぼくの影の罪はぼくの罪?でもぼくは寝てただけで。かといって影だけ牢屋に入るのもおかしな話だ。まったくなんてことをしてくるんだ、影は。ぼくと違ってずいぶん乱暴な性格だとは思ってたけど、まさか人殺しをするなんて。やっぱりここは知らんぷりをキメるしかないな。だってぼくはなにもしていないんだし。
パトカーのサイレンが近付いてきた。
「一体何があったんだ、ぼくの寝ている間に」
絆創膏を貼ってやりながら問い質す。影に無茶されれば、結局はぼくが困るのだ。
「通り魔を追い掛けた?それでちゃんと捕まえたのか?え?殺しちゃった?!死体は家の前?おいおい魂消(タマゲ)たねえ、こりゃ」
やっばり警察に行かなくちゃいけないかなあ。もしかしてぼくの影の罪はぼくの罪?でもぼくは寝てただけで。かといって影だけ牢屋に入るのもおかしな話だ。まったくなんてことをしてくるんだ、影は。ぼくと違ってずいぶん乱暴な性格だとは思ってたけど、まさか人殺しをするなんて。やっぱりここは知らんぷりをキメるしかないな。だってぼくはなにもしていないんだし。
パトカーのサイレンが近付いてきた。
2004年12月27日月曜日
2004年12月24日金曜日
WhiteChristmas2
クリスマスイヴの晩、影たちは、サンタクロースを迎えに行きます。
サンタクロースがよく見えるように、月は影たちを一晩だけ白くしてくれます。
影がいないので、子供達はぐっすりと眠ります。
子供達がどんなにサンタクロースに会いたくても起きていられないのは、そんな秘密があるのです。
サンタクロースがよく見えるように、月は影たちを一晩だけ白くしてくれます。
影がいないので、子供達はぐっすりと眠ります。
子供達がどんなにサンタクロースに会いたくても起きていられないのは、そんな秘密があるのです。
2004年12月23日木曜日
2004年12月19日日曜日
そんな昼下がりの公園
フケを撒き散らしながらうろつくおじさんの
溜息を煙草に託すおねえさんの
ブランコよりバイクに乗りたい高校生の
昼寝する猫の
あと50mが辛いおばあさんの
ゴミ置き場を突く鳩の
週刊誌のアイマスクが似合うおじさんの
影たちが仲良くはしゃぎまわる。
溜息を煙草に託すおねえさんの
ブランコよりバイクに乗りたい高校生の
昼寝する猫の
あと50mが辛いおばあさんの
ゴミ置き場を突く鳩の
週刊誌のアイマスクが似合うおじさんの
影たちが仲良くはしゃぎまわる。
2004年12月18日土曜日
ミドリちゃんと赤い影
ミドリちゃんの影は赤い。
ほかの人は影が一人で黒を背負わなくてはならないけれど
ミドリちゃんは緑だから、影は赤だけで黒くなれる。
ミドリちゃんとミドリちゃんの赤い影は、それで上手くいっていた。
ところが、ミドリちゃんが、強姦されて血を流して倒れていた時、誰も気がつかなかった。
ほかの人は影が一人で黒を背負わなくてはならないけれど
ミドリちゃんは緑だから、影は赤だけで黒くなれる。
ミドリちゃんとミドリちゃんの赤い影は、それで上手くいっていた。
ところが、ミドリちゃんが、強姦されて血を流して倒れていた時、誰も気がつかなかった。
2004年12月16日木曜日
黒い電話を見つけたら
はて、こんなところに公衆電話なんてあったかな。
老女が入っていた電話ボックスには見覚えがなかった。
よく磨かれた透明ガラスの中には、黒一色のプッシュフォン…まさか。
「おばあさん、かけちゃだめだ!」
扉を開けた時には、もう遅かった。
「ヨシオかい?母さんだよ、ちょっと膝が痛くてね、ちかご…」
老女の身体は頭から闇になり、足元まですっかり闇化すると、受話器に吸い込まれた。
垂れ下がった受話器が揺れているのを見ながら、俺は電話ボックスを離れた。
黒い電話はさらに黒くなり、満足そうに受話器が元に戻る。
強がりな影の弱気な「穴」に紛れる、影電話。
あなたの影にも電話が潜んでいるかもしれない。
老女が入っていた電話ボックスには見覚えがなかった。
よく磨かれた透明ガラスの中には、黒一色のプッシュフォン…まさか。
「おばあさん、かけちゃだめだ!」
扉を開けた時には、もう遅かった。
「ヨシオかい?母さんだよ、ちょっと膝が痛くてね、ちかご…」
老女の身体は頭から闇になり、足元まですっかり闇化すると、受話器に吸い込まれた。
垂れ下がった受話器が揺れているのを見ながら、俺は電話ボックスを離れた。
黒い電話はさらに黒くなり、満足そうに受話器が元に戻る。
強がりな影の弱気な「穴」に紛れる、影電話。
あなたの影にも電話が潜んでいるかもしれない。
2004年12月14日火曜日
あなたは知らないでしょうけれど
眠れない夜、あなたの影が子守歌を歌いにくる。
私はその声に包まれて、眠りに落ちる。
次の日あなたは元気でもあなたの影は欠伸ばかりしているから、ゴメンね、と小声で言う。
あなたの影はピースサインをして見せる。
私はその声に包まれて、眠りに落ちる。
次の日あなたは元気でもあなたの影は欠伸ばかりしているから、ゴメンね、と小声で言う。
あなたの影はピースサインをして見せる。
2004年12月13日月曜日
2004年12月10日金曜日
交通事故
「やった!」
俺は路肩に停めて、車から降りた。スッと猫が飛び出して来たのだ。
恐る恐る横たわる猫に近づく…あれ?
道路に倒れているのは、猫の影だった。
「おい、猫。おまえは影だけの猫じゃないか。車に轢かれたからってどうってことないだろ」
俺は猫の影をつついた。指にはアスファルトの感触だけ。
「おい、起きろよ、猫の影。起きないとなぁ…」
俺は辺りを見回し、ジーンズのジッパーを下ろした。「…こうしてやる!」
たちまち猫の影は動きだし、身震いしてしぶきを盛大に撒き散らし去った。
俺は、出始めたものを途中で引っ込めるわけにもいかず、道路の真ん中でむなしく立ち小便を続けた。
俺は路肩に停めて、車から降りた。スッと猫が飛び出して来たのだ。
恐る恐る横たわる猫に近づく…あれ?
道路に倒れているのは、猫の影だった。
「おい、猫。おまえは影だけの猫じゃないか。車に轢かれたからってどうってことないだろ」
俺は猫の影をつついた。指にはアスファルトの感触だけ。
「おい、起きろよ、猫の影。起きないとなぁ…」
俺は辺りを見回し、ジーンズのジッパーを下ろした。「…こうしてやる!」
たちまち猫の影は動きだし、身震いしてしぶきを盛大に撒き散らし去った。
俺は、出始めたものを途中で引っ込めるわけにもいかず、道路の真ん中でむなしく立ち小便を続けた。
2004年12月9日木曜日
あ
アケミちゃんはアンドーナッツを食べます。アケミちゃんはアンドーナッツより甘納豆のほうが甘いから好き
なのだけれど、あいにく甘納豆は朝市で売っていませんでした。
アンドーナッツを食べ終わってあくびをしていたアケミちゃんは足元にアリが集まっていることに気付いきま
した。「あー!」と声をあげるとアリたちはアケミちゃんを見上げて
「アンドーナッツをありがとう、アケミちゃん。」
と言いました。アリたちはアンドーナッツのおこぼれにあずかったのです。アケミちゃんのお行儀は目に余るも
のがあるようですね。
あきらめの悪いアケミちゃんはアリに負けじとアンドーナッツのカケラを集めました。あまりにも浅ましいの
で茜色のアゲハチョウも呆れています。
茜色のアゲハチョウというのは雨上がりの朝の空き地にしか現れません。アケミちゃんはそれを見つけて
「あ!茜色のアゲハチョウだ」
と網を振り回しました。
あっという間にアゲハチョウを捕まえたアケミちゃんはアキラくんに挨拶に行きました。
「アキラくん、茜色のアゲハチョウを捕まえました。」
アキラくんは茜色のアゲハチョウが欲しくなって、アケミちゃんと争いました。
荒っぽく扱われたアケミちゃんは穴に埋められ、茜色のアゲハチョウは明くる日に泡になりました。あしから
ず。
きららメール小説大賞投稿作
なのだけれど、あいにく甘納豆は朝市で売っていませんでした。
アンドーナッツを食べ終わってあくびをしていたアケミちゃんは足元にアリが集まっていることに気付いきま
した。「あー!」と声をあげるとアリたちはアケミちゃんを見上げて
「アンドーナッツをありがとう、アケミちゃん。」
と言いました。アリたちはアンドーナッツのおこぼれにあずかったのです。アケミちゃんのお行儀は目に余るも
のがあるようですね。
あきらめの悪いアケミちゃんはアリに負けじとアンドーナッツのカケラを集めました。あまりにも浅ましいの
で茜色のアゲハチョウも呆れています。
茜色のアゲハチョウというのは雨上がりの朝の空き地にしか現れません。アケミちゃんはそれを見つけて
「あ!茜色のアゲハチョウだ」
と網を振り回しました。
あっという間にアゲハチョウを捕まえたアケミちゃんはアキラくんに挨拶に行きました。
「アキラくん、茜色のアゲハチョウを捕まえました。」
アキラくんは茜色のアゲハチョウが欲しくなって、アケミちゃんと争いました。
荒っぽく扱われたアケミちゃんは穴に埋められ、茜色のアゲハチョウは明くる日に泡になりました。あしから
ず。
きららメール小説大賞投稿作
2004年12月4日土曜日
2004年12月3日金曜日
2004年12月1日水曜日
イキハヨイヨイ カエリハ…
散歩にでかけた。道が分かれ、どちらに行こうか迷っていると影が指を指した。
「影の言うとおりに行ってみるか」
影は辻にくる度にビシッと指を指した。
僕は影の指図を見逃さないように下ばかり見て歩いた。
少しづつ影が長くなり、すぐに暗くなった。
しばらくは街灯を頼りに影は動いていたが、まもなく真っ暗になった。
はじめて辺りを見回した。暗くて何も見えないが、知らない場所であることは間違いない。
足が棒のように疲れていた。のども渇いた。冷たい風が吹いた。
でも僕は財布もコートも持っていない。ほんの少し近所を廻るつもりで家を出たのだから。
僕はその場にしゃがみ込み、目を閉じた。朝になれば影が家まで連れていってく れる さ…
「影の言うとおりに行ってみるか」
影は辻にくる度にビシッと指を指した。
僕は影の指図を見逃さないように下ばかり見て歩いた。
少しづつ影が長くなり、すぐに暗くなった。
しばらくは街灯を頼りに影は動いていたが、まもなく真っ暗になった。
はじめて辺りを見回した。暗くて何も見えないが、知らない場所であることは間違いない。
足が棒のように疲れていた。のども渇いた。冷たい風が吹いた。
でも僕は財布もコートも持っていない。ほんの少し近所を廻るつもりで家を出たのだから。
僕はその場にしゃがみ込み、目を閉じた。朝になれば影が家まで連れていってく れる さ…
登録:
投稿 (Atom)