お月さまを迎えにいこうと夕暮れの『黒猫の塔』に向かった。
街灯に寄り掛かり煙突を見上げてどれくらいたっただろうか。
だいぶあたりが暗くなってきたと思うと煙突の真上の空で何か光が見えた。
その光はどんどん大きくなり、光に吸い込まれるような気がして目を逸らすことができない。
そのうちに見上げた空は光でいっぱいになり……
「どこか痛いところはありませんか?」
「はぁ……ここは……どこですか?」
「『黒猫の塔』の中ですよ。煙突から落ちてきたので驚きましたよ」
お月さまの目がキラリと光った。まるで猫の目みたいだった。