巧妙に隠れているつもりの宇宙船が春の生温かい雨によってじんわりと姿を露わされ、焦っている。穴に潜り、不可視化性能を最大にしてみたが、どうにも隠れられない。 近隣住民はシャイな宇宙船に気遣い「UFOのいない町」と横断幕を商店街に掲げた。(116字)
2023年3月28日火曜日
2023年3月25日土曜日
雨が降ってるので宣伝
「雨天開店」の貼り紙がある店に行ってみることにした。気怠い身体を引き摺って到着したのは蛙の店長と蝸牛のバイトが仲良く働く喫茶店であった。ホットレモネードを飲みながら本を読む。店内はどこもかしこも濡れていて本はみるみるうちに変容する。(116字)
2023年3月18日土曜日
雨が降ってるので宣伝
咲き始めの桜が冷たく濡れる。雨粒を振り落としたいが、強く揺れれば花も落ちてしまう。毎朝、こちらを見上げる人間たちの様子を思い浮かべ、そっと震えるだけにする。一片だけ花びらが落ち、疲れた立て看板に貼りついた。(103字)
2023年3月16日木曜日
雨が降ってるので宣伝
ポストにチラシが入っていたが、配達員が急な雨にチラシを濡らしたらしい。蛍光色のインクは滲んで何も読めない。広げて乾かしたら滲んだままの文字が蠢き出した。チカチカと喧しい。近所の怪しげな老人に預ける。きっと長い髭が解読するだろう。(114字)
2023年3月8日水曜日
2023年2月28日火曜日
#2月の星々 「分」投稿作
大切なティーカップが割れた。紅茶を入れたまま、微かに「ピキッ」と鳴いて、真っ二つに割れた。よい香りの水溜りが広がる。捨てられず、いつも通りに棚に仕舞った。翌朝、棚には二つの小ぶりなティーカップがあった。割れたのではない。分裂し、ペアになったのだと理解した。今日、初めて恋人を招く。(140字)
2023年2月25日土曜日
#2月の星々 「分」投稿作
実は、殆どの天体が天秤で均衡を保っているのだ。ほんの僅かな変化で、軌道やら公転周期やらが変わってしまうから、夥しい数の分銅が宇宙には存在している。少し前、月と釣り合う分銅が少し多くなり、天秤が揺れた。少し前だが、人間の時間では太古の昔だから、まぁ、あまり気にせずともよかろう。(138字)
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