2005年3月15日火曜日

パイロット

自慢の蝶型飛行機で飛び回るネズミの
背中のリュックサックに入っているビスケットを
ひそかに狙っている橋田さんが
いつも昼寝している公園を
見回りに来ている警備員さんが
家で飼っているネズミは
蝶型飛行機のパイロット

2005年3月14日月曜日

再び会うために

ぼくは前、ちょうちょだったと思う。思う、じゃない。絶対ちょうちょだった。
サナギとして眠っていた時の気持ち、花の蜜の味、羽を通る風、全部覚えている。
だから、ぼくはちょうちょを捕まえる。
友達だったモンシロチョウのしげ子ちゃんに会うために。

2005年3月13日日曜日

危機一髪

「プップーー!!!」
クラクションと急ブレーキの悲鳴に、ぼくは振り返った。
たった今渡り終えた横断歩道の真ん中で黄色いビートルが停まった。
?!
ビートルの上に何かが浮いている…。黒と黄色のまだら。
数え切れないほどのアゲハ蝶が、二年生くらいの男の子を包むように取り巻いていた。
アゲハ蝶の大群は、ぼくのすぐ脇まで来て男の子を地面に降ろすと、あちこちに散っていった。
男の子も、駆けて行った。

2005年3月11日金曜日

毎蝶新聞、夕刊記事より

大浦銀筋豹紋さん(56才)胸を圧迫されて殺害の上連れ去られる。
家族の話によると、大浦さんは自宅近くで夕食の鵯花(ヒヨドリバナ)を集めているところを何者かに襲われた。胸を強く圧され、即死。犯人は遺体を持ち去った。
蝶族の誘拐事件に詳しい浅間一文字氏は「遺体は三角の棺に入れられ運ばれた後、天翅板で磔にされミイラ化します。犯人がその後、ミイラをどのように扱うのか、ミイラにする目的などは未解明です」と話す。
最近、誘拐事件が頻発しており、特に食事時は周囲への注意が疎かになり危険だという。

2005年3月10日木曜日

鈴が鳴るとき

 ピエロはしゃぼん玉から現れた。
 宿題を済ませたリオは部屋の明かりを落とし、窓を開け、しゃぼん玉を吹く。住宅街の街灯に、リオのしゃぼん玉が照らされ、弾ける。
 窓際の床にしゃがんでいるリオの傍らには、小さなラジオが置かれている。流れてくるのはリオの知らない言葉だ。何を言っているのかわからなくても構わない。ただ誰かが生きている気配と、時間の流れを感じられればよかった。ラジオが伝える零時の時報を確かめるとリオは最後のしゃぼん玉を吹き、それが弾けるのを見届けてベッドに向かう。それがリオのおやすみの儀式。
 今夜、零時のしゃぼん玉が街灯に照らされ輝いた時、ピエロが現れた。爪先が長くカールした靴を履き、細かな刺繍の施されたベストを着、赤い鼻をつけ、先っぽに大きな鈴の付いたとんがり帽をかぶっている。ピエロは子供だった。リオは自分と同い年だとすぐにわかった。
 ピエロは丁寧にお辞儀をして踊りはじめる。クタクタとしたその滑稽な動きにリオは笑った。身を翻すたび、その小さく引き締まった身体は街灯を反射して七色に輝いたが、帽子の鈴は決して鳴らなかった。リオが拍手をするとピエロはふわりとリオに近付いてきて窓の前でとまり、そのまま浮かんでいる。窓の向こうとこちら、しかし開け放たれた窓は二人を遮らない。リオとピエロは見つめあった。ピエロは灰色の瞳を動かさない。
 リオは誰かとこんなにも深く長く見つめあったことはなかった。リオもピエロも視線を外さなかった。リオは視線のはずしかたを知らなかったし、はずしたくなかった。もっと近くで、そう思うとリオの手がゆっくり伸びた。
「ダメ、だよ」
 ピエロが呟き、リオはすばやく手を退いた。ピエロの声がリオの体内でこだまし、リオの髪を胸を背中を足を撫でていく。二人はさらに深く見つめあう。
 リオは窓の外へ身を乗り出した。ピエロは何も言わずに小さく笑う。リオのくちびるがピエロに触れる。チリン。とんがり帽子の鈴の音を残してピエロは消えた。
 しゃぼん玉はいつか弾ける。リオはもう、しゃぼん玉を吹かない。


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千文字世界 投稿作品

2005年3月9日水曜日

深刻な問題

顔面に蝶が張り付いた。
左の頬にべったりと。
「参ったな」
理由その1 痒い
理由その2 変人扱いされる
理由その3 鏡が気になる
理由その4 蝶の健康が気になる
理由その5 蝶の配偶蝶を捜さなければならない
理由その6 産まれた毛虫は無事成長するか
理由その7 現在の蝶に代わり私の頬に張り付く子蝶はいるか

2005年3月8日火曜日

蝶の羽に穴

もう、逃がさない。