2004年12月19日日曜日

そんな昼下がりの公園

フケを撒き散らしながらうろつくおじさんの
溜息を煙草に託すおねえさんの
ブランコよりバイクに乗りたい高校生の
昼寝する猫の
あと50mが辛いおばあさんの
ゴミ置き場を突く鳩の
週刊誌のアイマスクが似合うおじさんの
影たちが仲良くはしゃぎまわる。

2004年12月18日土曜日

ミドリちゃんと赤い影

ミドリちゃんの影は赤い。
ほかの人は影が一人で黒を背負わなくてはならないけれど
ミドリちゃんは緑だから、影は赤だけで黒くなれる。
ミドリちゃんとミドリちゃんの赤い影は、それで上手くいっていた。
ところが、ミドリちゃんが、強姦されて血を流して倒れていた時、誰も気がつかなかった。

2004年12月16日木曜日

黒い電話を見つけたら

はて、こんなところに公衆電話なんてあったかな。
老女が入っていた電話ボックスには見覚えがなかった。
よく磨かれた透明ガラスの中には、黒一色のプッシュフォン…まさか。
「おばあさん、かけちゃだめだ!」
扉を開けた時には、もう遅かった。
「ヨシオかい?母さんだよ、ちょっと膝が痛くてね、ちかご…」
老女の身体は頭から闇になり、足元まですっかり闇化すると、受話器に吸い込まれた。
垂れ下がった受話器が揺れているのを見ながら、俺は電話ボックスを離れた。

黒い電話はさらに黒くなり、満足そうに受話器が元に戻る。
強がりな影の弱気な「穴」に紛れる、影電話。
あなたの影にも電話が潜んでいるかもしれない。

2004年12月14日火曜日

あなたは知らないでしょうけれど

眠れない夜、あなたの影が子守歌を歌いにくる。
私はその声に包まれて、眠りに落ちる。
次の日あなたは元気でもあなたの影は欠伸ばかりしているから、ゴメンね、と小声で言う。
あなたの影はピースサインをして見せる。

2004年12月13日月曜日

ちょっと聞いてもいいですか

影まんじゅうを食べたい、と言って、じいさんは死んだんです。影まんじゅう、どこで売っているか、知ってますか?

初恋

麗しの君は、黄色い影の持ち主でした。

2004年12月10日金曜日

交通事故

「やった!」
俺は路肩に停めて、車から降りた。スッと猫が飛び出して来たのだ。
恐る恐る横たわる猫に近づく…あれ?
道路に倒れているのは、猫の影だった。
「おい、猫。おまえは影だけの猫じゃないか。車に轢かれたからってどうってことないだろ」
俺は猫の影をつついた。指にはアスファルトの感触だけ。
「おい、起きろよ、猫の影。起きないとなぁ…」
俺は辺りを見回し、ジーンズのジッパーを下ろした。「…こうしてやる!」
たちまち猫の影は動きだし、身震いしてしぶきを盛大に撒き散らし去った。
俺は、出始めたものを途中で引っ込めるわけにもいかず、道路の真ん中でむなしく立ち小便を続けた。