2004年3月14日日曜日

駅長が駅弁を笑顔で届けると絵師は会釈を返す。
その映像は衛星放送によって映じられた。
駅弁の中身は海老と枝豆。絵師の栄養はこれがすべて。
エプロンをつけ、エメラルド色の絵の具を絵筆に取ると、絵師はエレベーターで円盤に乗り込んだ。
えっへん、絵空事のはじまりだ。
絵師の影響は永久に永遠。

2004年3月13日土曜日

うすのろ浦島は麗しの海亀に胡散臭い歌を歌う。
海亀、卵を産む。噂によると初産である。
通りかかったウイスキーを飲むうろんな植木屋。
海亀打って憂さ晴らし。
うかつに手を出すと憂き目に合うぜ。
植木屋の薄汚い上着に蛆虫うようよ。
呻く植木屋のウイスキーを浦島が奪う。
浦島、旨いウイスキーを飲んでウハウハ。

2004年3月12日金曜日

井戸の中の椅子に居座る医師はいつまでもいなくならないイガグリ頭の居候に苛立ち、いつも威嚇用の雷をいじっていたがいつしか居眠り、いびきをかきはじめた。
居候は意気軒昂いきり立った。
医師を虐めようと委員会で言い放つ。意義なし。居候の以外にだれもいないのだから。
居候は急いで井戸を這い出し井戸の入り口から石を入れる。
命乞いむなしく医師は一瞬で生き埋め。
医師の遺志により遺骨は田舎の池のイグアナの餌になった。
なんて卑しく忌まわしいこのイガグリ頭の居候。

2004年3月11日木曜日

秋のある暑い朝、青空に赤い雲が現れるころ
あたしはあいつの足に「アイシテル」と挨拶した。
朝顔と紫陽花が「あらまあ、あこぎなこと」とあしらったので
あたしとあいつは雨宿りと相なった。
あいつの網にかかった虻の味は甘かった。

2004年3月9日火曜日

パプリカと

その町に入ってまもなくのことだった。
信号機から赤い物がゆっくりと落ちてくる。
「おい、ありゃなんだ」
私はブレーキを踏み込みながら助手席の友人に言った。
「ピーマンだ」
赤ピーマンは信号機の赤ランプの真下一メートルのあたりで下降をやめ、プラプラ風に揺れている。
まもなく赤ピーマンは上昇を始めると同時に緑ピーマンが降りてきた。
車を発車させる。
「黄色ピーマン見損なったな」
「あぁ」
 しばらくすると遮断機にさしかかった。
カンカンカンカンカンカン
繰り返し光るライトからはグレープフルーツが飛び出していた。

2004年3月7日日曜日

サクランボ

子供の頃から少しずつ小銭を入れていた貯金箱が重くなったので開けると、
中身はすべてサクランボのタネだった。
かなり危険な賭けではあったが、銀行に持っていくことにした。
窓口でそれを出すと若い行員は小さく「アッ」と声をあげ
「少々お待ちください」と奥へ行ってしまった。
まもなく偉そうなおじさんが現れ「どうぞどうぞ」と小部屋へ通された。
事情を話すとおじさんは深く何度もうなずいた。
サクランボのタネの値打ちを知りたければ試してみるといい。
但し小銭がサクランボのタネに変わるには64の条件が揃わなければならない。

2004年3月6日土曜日

タクシー運転手の見事な禿頭の上で苺がクルクル踊っていた。
釣銭に受け取った二枚の十円玉はほのかにストロベリーの香りがした。
以来、苺を見るたび禿頭を思い起こすのですこし困っている。