その町に入ってまもなくのことだった。
信号機から赤い物がゆっくりと落ちてくる。
「おい、ありゃなんだ」
私はブレーキを踏み込みながら助手席の友人に言った。
「ピーマンだ」
赤ピーマンは信号機の赤ランプの真下一メートルのあたりで下降をやめ、プラプラ風に揺れている。
まもなく赤ピーマンは上昇を始めると同時に緑ピーマンが降りてきた。
車を発車させる。
「黄色ピーマン見損なったな」
「あぁ」
しばらくすると遮断機にさしかかった。
カンカンカンカンカンカン
繰り返し光るライトからはグレープフルーツが飛び出していた。