切れかけた街灯の下に、佇むものを見る。
その街灯は、もう長いこと切れかけたままである。交換される気配もなく、完全に切れることもない。何年もジリジリと消えたり点いたりを繰り返しているのだった。
佇むものに気がついたのも、いつのことだったかはっきりとは思い出せない。はじめは自転車や犬猫の姿ばかりしていたのだろう、気にも留めなかったのだ。ある時それが人の形をしているのを目撃してから、否応なしに街灯の下を注目するようになった。暗がりの中、街灯の明滅に合わせ、佇むものも揺らぐ。人の形をしたものが立っている時は、声を掛けるべきかと迷う。一度もそれをしなかったのは、猫でも人でも自転車でも、それらが文字通り地に足が着いていないからだ。
彼は誰時にその道を通る。街灯はやはり、不規則な明滅を繰り返していた。
私は、ずっとそれらが「ひとり」だと思い込んでいた。夜にそこを通る時はいつも、一人か一匹か一台だけだったから、姿を変えて同じものが居るのだと思っていた。だが、そうではなかった。空のもとで目にしたのは、猫や狸や子供や人形が組んず解れつ、街灯をも巻き込みながら蠢く巨大な肉の塊であった。よくよく見れば、所々に傘や薬缶や自転車がぎちぎちと挟まっている。
「不用品ですか?」
清掃員の格好をした男だった。男は一本だけの腕を忙しなく動かしながら肉の塊を継ぎ接ぎだらけの頭陀袋に押し込み、繰り返す。
「不用品ですか?」
脳裏に浮かぶものを打ち消そうと大声で答える。
「違います」
ニヤリと笑い、清掃員は頭陀袋を背中に担いで歩き始める。頭陀袋の破れ目から、たった今思い浮かべた顔をした人が落ちる。
ビーケーワン怪談投稿作